理想の女性像

源氏物語には、光源氏と恋に落ちる様々な女性が描かれていますが、皆さんはどの女性がお好み、もしくは共感できるでしょうか?

私は、花散里が好きです。

 

私が初めて源氏物語を読んだのは高校生の時で、瀬戸内寂聴さん訳のものでした。

その頃の私は「自分は可愛くないし、美人でもない。人に好かれるような特筆すべき点もない。そんな自分でも人に愛されるようになるのだろうか?」という、漠然とした不安がありました。

そんな時に読んだ源氏物語光源氏に愛される女性の多くは、美人で家柄もよく、教養もあって非の打ちどころがありません。やはり男性からも世の中から愛されるのはこういう女性だけなのだろうか、ともやもやした気持ちで読んでいました。

しかし、そこに花散里という女性が登場します。彼女は中の下くらいの容姿で、とりたてて美人ではありません。

末摘花というあまりの不細工さに同情して、光源氏に気に留めてもらった女性がいたので、花散里もそういう愛よりも情けをかけられる女性なのかしら、と最初の頃は思っていました。

光源氏が若い頃は、花散里は心優しい女性だけどそんなにぱっとしなくて、そのほかのきらびやかな女性たちに比べると影が薄い印象でした。

しかし時が経ち、光源氏が紫の上という最愛の女性を亡くし、自分も年老いてうら寂しい晩年を送っている時に再び花散里が登場します。

彼女は光源氏の悩みやさみしさに耳を傾け、彼の心にそっと寄り添います。

光源氏も、たとえ一夜を花散里の部屋で過ごすことがあっても、もう寝所を共にすることもありませんが、それでも彼女と過ごす時間に安らぎを覚え、花散里の染み入るような優しさはほかの女性と過ごす時間には得られないものだと感じます。

 

私はこの花散里のエピソードを読み、自分もこういう女性になりたいと思いました。

たとえ美人じゃなくても、人目を引くような特徴がなくても、優しく心配りができる女性は何にも劣らず美しい。そして、そういう心は長い年月が経っても変わることなく持ち続けることができるのだ。

源氏物語を読み、私の中に目標とするべき女性像が生まれました。

 

それから10年が経ち、私もいい大人になりましたが、花散里のような心優しい女性になれたかと聞かれると、まだまだかなと反省することばかりです。

花散里は今でも私の理想の女性像で、そういう理想の人を1000年も前に書かれた本の中から得られたというのも私にとっては特別な思い出です。

これからも、人に優しく心配りができるよう、自分に磨きをかけ邁進していきたい所存です。